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サイコー君のくま父さん

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『大泥棒』 その10

  6 下水道

 ――数年後、わたしはセント・ストーンを国一番の権力者へ献上することにより、貴族の一員となった。
 その後はわたしの変装術を活かして、次々に人脈と財力を蓄え、みるみるうちに出世していった。
 ……そうそう、どこで聞いたか忘れたが、ちょっと小耳に挟んだ奇妙な話がある。
 あのジェダという男、彼は盗んだ金を教会に寄付していたのだ。
 ……イカれたただの泥棒だと思っていたが、やっていることの一部は聖人のようだった。
 もしかしたら、志はわたしと同じだったのかもしれないな。死ぬには惜しい人材だったかもしれない。
 ……奇妙な話とはジェダとルーシーが死んでからの話だ。
 彼らの死体の処理について……実は一人として知る者はいなかった。
 カラスにでも食べられたのか? それとも臓器目当てに闇の市場に流れてしまったのか。
 一部の噂では奴はまだ生きているとか、そんな情報さえ入ってくる。
 しかし、まさかそんなはずはない。ジェダを殺したのはジャックだったし、ルーシーを殺したのはわたしだ。
 ……むろん、そんなこと、今では誰にも言えないがな。
 
 わたしはセント・ストーンを手にして、約二十年でノースデンの市長になった。
 今では献上したセント・ストーンもわたしの手元にある。
 結局、石はわたしのところに戻って来たのだ。
 過去にこの石を巡って、数回の戦争があった。死者は何万、何十万と出た。
 ……やはり恐ろしい石である。

 ――ある日のこと、わたしの部下が突然、こう言った。
「市長。ジャンと名乗る男が市長に許可を出してほしいと言っています」
「許可……それは何の許可だ?」
「下水道の調査です」
「下水道……あんなところか……。その、ジャンとやらは何者だ?」
「ノースデンの者ではないと思いますが……ですが、下水道に関しての知識や技術は誰よりも持っていると豪語しています」
「金はどうする?」
「自分たちが出すと言っています」
「まさか……本気で下水道の整備を行おうと思えば、莫大なし金がかかる。……それ以上に危険もな。その者の風貌は?」
「立派な服を着ています。年齢は四十歳ぐらいかと……お見えになられますか?」
「いや、いい。これから会議がある。代わりの者を行かそう」
「それで……許可の方は? 彼らに我が国の下水道を任せてもよろしいのでしょうか?」
「……うむ、許可を出そう。第一、それは誰もやりたがらないものだ。それを自ら進んでやるということはその者はきっと聖者だよ。そういう人間は信用できる。……成果によっては市から出す援助金は惜しまない。いや、国全体がサポートできるようわたしの方から働きかけよう。……わたしもずっと前からこの国の下水道については考えていた。これは民衆全員の希望だ。結果を楽しみにしている、と伝えておいてくれ」
「はっ、了解しました!」
「……久しく見なかった勇気ある者……か。どんな時代になってもそういう者が国を、世界を動かす。ジャンという男がそのような者であってほしいな」

 ……この日から約二十五年後、下水道が完全に整備された。
 そしてその年を境に、この国に水洗トイレが普及されたのだった。