サイコー君のくま父さん

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『くま父さん』 その11(完結)

  2 加藤隼人

 ――さつきが公園を出て二十分。それまでワシはくま母さんをずっと見張っていた。
「……おもんねー、おもんねーわ」
「あ、はは……残念やったな、くま母さん」
「おう、お前別の本買ってこいや。こんなレベルの低い本読んで乙女の発情期抑えられるわけないやろが」
「あ、うん……でもちょっと待って。今さつきが、くま母さん好みの男の子、連れて来てくれてるから」
「そういや、おらんの。……ま、美少年呼んでくるんはいいことやけど、俺、けっこう面食いやで? そこそこのレベルの男の子連れて来られてもなー。期待してええんやろか?」
「それはもう……絶対気に入ると思うわ」
「ホンマかぁ~? まあ期待せんで待っといたるけど……もしそいつがブサメンやったら島一つ沈めるからな。腹いせで」
「は、はは……そのときはどうぞ」
 これや。これがくま母さんが恐ろしいって言われる理由や。
 島一つって言ってもそれが日本列島なこともあるわけやからな。
 早く……来てくれ、さつき。日本……いや、地球はお前の手にかかってるんや。
 ――そして、さつきが公園にやってくる。一人の少年と手をつないで。
「くま父っ!」
「おおっ、さつき……! 連れてきてくれたか!」
「うん……連れてきた。別の公園でサッカーやってたわ。隼人……」
 外でよく遊ぶ割には生っ白い肌。長くてスラリとした手足。サラサラの黒髪。
 そして、一番の特徴はキラキラした瞳。
 それはまるで小宇宙。小さな鼻で、笑顔がとてもかわいい。
 ワシは以前、この子がメントスをかじってる姿を見たことがあるで。そのときはまるで小鳥さんのようやった。この子は誰よりもきれいやった。真っ白で純粋な心を持っている。
 どんな天使にも敵わない。例え、神でさえも彼に惚れ込むだろう。奇跡のような男の子やった。
 白地に襟はピンク色やった。ハーフパンツも白っぽい。よく見たら目立たないぐらいの細いカラフルな線で軽く十字に交差している。オシャレでかわいい服やった。
 大胆に胸元をさらけ出して、見る者全ての視線をそこに集中させた。
 鎖骨がセクシー。もう少しで薄いピンクのポッチが見えそうやった。
 つい斜め上から見下ろしたくなる。もしくは隼人君に前屈みになってくれとお願いしたくなる。
 こんなん、おっさんが着れるわけない。若い子だけしか着られへん。しかもこんなかわいらしい服を着こなすには相当のルックスが必要になってくる。
 この子は見事にそれを着こなしてた。ワシにはこの服が隼人君のために作られた服としか思われへん。
 膝から下は生足やねん! 生足!
 さつきも美人やで。でも、隼人君のほうがもっとかわいくて、きれいやった。……男のワシでもそう思うんや。くま母さんにはそれ以上の刺激やで。

「これは美少年すぎる!!」
 ビシュッ!
 くま母さんは隼人君を見るなり、いきなり鼻血!
 その量は軽く一リットルは超えていた。
 くま母さんの下にいたすけちゃんに、くま母さんの大量の鼻血がかかる。「あついー」なんて、かわいらしい仕草で困ってた。
「……さつき。なんでこのでかいクマ、鼻血出してんの?」
「……あんたに萌えたんじゃない」
「ふーん……、死ね」
 S! ……隼人はさつきの兄貴や。小学六年生。
 遺伝子はウソをつかへんな。このS具合はさつきと同じやった。
 そしてくま母さんはS好き。この反応……だいぶ気に入ったようや。
「ぐはっ! ……くっ、またしても鼻血が……。しかし! いい……実にいい。いいSぶりや。興奮する。はぁー、はぁー……」
「くま母さん、頼むぅー! 気温がぁぁー!」
 興奮しすぎてサウナ状態に。……いや、それ以上。暑さで頭がクラクラした。
 このままやとぶっ倒れそうな気がした。
 ワシもさつきもすけちゃんも、そして隼人君も汗だくやった。
「隼人君が……溶けてまうで!」
「おっと、それはまずい」
 ワシの言葉でくま母さんがハッと我に返る。
 ……すぐに気温の上昇は収まった。
「……どれ、これぐらいやったらええやろ。しかし……かわいいな。マジでかわいい。俺好みやん。ちょっと……失礼」
 くま母さんは隼人君に近づき、そのまま頭を撫で始めた。
「かわいい、かわいい……」
 もちろん隼人君は困り顔。
「ちょっと、それ犯罪やって!」
 あせるわ。いくらくま母さんでもやっていいことと、悪いことがあるで。
 子どもの性犯罪反対。ましてや、ワシの妻がそんなことするなんて、止めるしかないやろ。隼人君効果バツグンすぎる。
「ほら、笑顔見せてみ。お前のキュートな笑顔。見たいねん」
「いや」
「ん? なんでや?」
 声を荒げるくま母さん。……でも、これに関してはワシから強制はできん。
 ここでさつきがフォローを入れる。
「隼人は簡単に自分の意思を曲げへんで。笑顔が見たいんやったら、なにか喜ばせるとかしないと……」
「おっと、そうか」
 くま母さんが隼人君を喜ばす? ……うーん、くま母さんに一体何ができんねや?
 少し考え、くま母さんの出した答えは、
「気温……下げたるから笑え。涼しくしたるで。何度がええねん?」
「気温だけなん? ……もう早く地球から出ていって。太陽なんやろ? さつきから聞いた。この暑さ、迷惑やで?」
「うぐっ、うぬぬ~……」
 ああ、困ってるな。……じゃ、そろそろワシの出番かな。ここまで来たらあとはもう簡単。
 小学生の喜ぶもんぐらい、ワシ知ってるし。それを提供することもできる。……あの男を使ったらな。
「くま母さん、ここはワシに任せとき。へへ……」
「お前、こいつの喜ぶもんわかんのか? 笑顔、見られんのか?」
「今時の子どもは現実的なもんやで。ワシ、知り合いに歩く銀行がおるねん」

 プルルルル、プルルルル……。
『……はいー』
 歩く銀行――すなわち、それ足利。

 足利はワシが電話をかけて五分で公園に来た。はよ、来なキレるでって、脅したんが正解やったな。
 今では足利はニート生活で、実家で家族と暮らしていた。
 足利が来たら挨拶もなしに、いきなりワシは飛びついた。
 足利はなぜか喜んだで。キモいやろ?
 でも、抱きつくいう行為は単に足利に抱きつきたかった――わけではない。
 そんなんワシがもろに変態やん。ワシの狙いは足利のズボンの後ろポケットにあった。
「やめて、くま父さん。やめてぇー!」
「こらっ! さっさと出すもん出せや!」
 くっ、しぶとい! 足利のくせに……!
「うりゃつ!」
「あっ!」
 盗った。奪ったった。足利の財布を。
「それ、オチィ? なあ、なんでボク、オチにしか出てこうへんの? なあ?」
 ……うるさいのー。ええねん。お前の存在なんかどうでも。
 ワシはそのまま踵を返した――が、足利がしつこく追いかけてくる。
 仕方ないので拳を振り上げ、威嚇することに。
「んんっ!!」
「うわっ、怖い……!」
 へへ、こんなんでビビってるわ。やっぱり足利、ビビらせんのは楽やで。
 一方、足利は……、
「……でも、やっぱりかわいいな、くま父さんは。いいよ。ボク、また仕事してお金貯めるから」
 ……なんてキモいことを言っている。
 もう無視! 金の都合さえついたら足利なんかもう用事はない。とっととこっから帰ってほしかった。
「……おい、あいつ誰?」
「あ、そうか。くま母さんは知らんかったな。紹介するわ……まあ紹介ってもんでもないけど。名前は足利まさる。クマフェチの変態野郎やからくま母さんも気ぃつけや。あいつ、クマやったらどんなんでもいけるクチやから。ちなみにすけちゃんも狙われてる」
「マジか? ……クマの天敵やな。足利、キモス。なんやったら殺したろか?」
「いや、ええで。あいつ、タフやから殺すん面倒やで。それにこうやってお金持ってきてくるから。利用するだけ利用すんねん」
「そうか……なら納得」
 さて、足利から奪い取ったお財布を隼人君にあげるか。
「はい、隼人君! あげる」
 隼人君は嬉しそうに財布を開けた。……ワシも実際いくら入っているか確認はしていない。
 ……しまったな。もし、中に一万円も入ってなかったらどうしよ。
 そのときは足利の家、押しかけるか。実家が金持ちって話、聞いた気がする。
 でも、そんな心配は無用やった。なぜなら――、
「福沢さんが五枚かー……」
 五枚。つまり五万。
 ……へぇー、けっこうやるやんけ。無銭入院して金ない割にはな。オヤジから金、もらったんやろか。
 隼人君はくま母さんのほうを向き、とびっきりの笑顔でこう言った。
「ありがとう、くま母さん!」

 …………。
 ドキッ!
 ……ドキッとしたわ。
 あかん……これ、誰か死ぬレベルやで。なんでこの子は天使ですら息を止まらすような素敵な笑顔すんねやろ。……こんなん反則やん。
 かわいすぎる!
 見てみ、くま母さんを。
 萌えすぎて固まってるやん。まるで巨大な置物やで。……まあ、ワシも確かに萌えたよ。
 男女問わず萌えさせる能力か……ある意味最強やな。ショタっ子最強や。
 おっと、涎……効くわぁー。
「くま母さん? ちょっと、くま母さん?」
 あかん。全然応答ない。まさか萌え死んだ……とか?
「ちょっと太陽! 死んだんか? なあ?」
「おっ、おお……大丈夫や。……でも、萌えすぎてやばかったけどな」
 この隼人君スマイル。ワシとくま母さんには効果絶大やった。……でも、人間にはあんまり効き目がないようや。
 さつきは兄妹のため、免疫があるんか無反応。すけちゃんもぼーっとしてる。
 足利に関してはいやらしい目でワシのことずっと見てるからな。……死ね! 隼人君には興味ないんか……人間の感情は複雑やな。
 たぶんクマやったら一発やで。硬派なマサオですら、隼人君スマイルには降参するやろう。
「かわ萌え(かわいくて萌える)……かわ萌えや……かわ萌えっ! こいつ、連れて行きたいっ!!」
「えっ、ちょっと待って……連れて行くって、もしかして太陽に?」
「おう、そうや! 決めた。連れて行くで。文句はないな?」
「……あるに決まってるやろ。ちょっと落ち着いて……まず宇宙に隼人君連れてっても酸素ないから」
「じゃあ俺の体毛の中で暮らしたらええねん! 体毛の中で暮らそ。な?」
 くま母さんは体毛を伸ばし、隼人君を包み込んだ。
 そして、自分の手元にたぐり寄せる。……完全に犯罪だった。
 しかし、くま母さんは異常なまでに興奮している。このままやと、隼人君がマジで宇宙に連れて行かれることもありえた。
 ……まずいな。ワシが説得せな、この発情鬼はとんでもない行動に出る。
「狭いって。まあ、くま母さんが巨大化できるん知ってるけど、そんなん拷問以外のなにものでもないやろ。酸素対策に体毛の中で植物でも置くんか? それに学校は? 食べ物は? 友達は?」
「なに、酸素ぐらいどうにかしたる! 体毛の中に隼人だけの星を作んねや! そこに友達も住まわせたらいい!」
 そんな……くま母さん、パワーはあるけどそういう器用なことできへんやろ。
 やり方があまりにも強引や。太陽のイメージ、一気に悪なるで。
「……くま母さん、隼人君を宇宙に連れて行く? それは簡単やろ……くま母さんの能力があればな。でもな、そんな強引に連れて行って、隼人君は笑顔を見せると思うか?」
「はっ! ……そうや。あかん……金も、地球じゃないと使われへん」
「そうや。それに隼人君はサッカー部。毎日サッカーするんが何よりも楽しみにしてる子やねんで」
「いい……サッカー少年かわいい。生足、見放題やん」
「そや、生足はいい……くま母さんも見たいやろ?」
「うん♪」
「でも、くま母さんの体毛の中やったらどうや? ……考えるまでもないな。まず見られへんで」
「しまった……あかんか。もし、こいつを連れて帰ったら太陽のどんな激務にでも耐えられんのに……」
 そんなに太陽の仕事ってしんどいもんなんや……ワシにはようわからん。
「なあ、くま母さん。これでもうわかったやろ? 隼人君、連れて帰るんは諦め」
「でも、俺、恋した……お前みたいなおっさんと結婚してはやまった。隼人と結婚するべきやった」
「隼人君、まだ小学生やで。結婚できへんで?」
「知ってるわぁ、そんなもん! 隼人が大人になるまで待っとくんや。待っとくんや……
いつまでもな」
「……せやったら、くま母さん。なんべんも地球に来たらええやん」
「それやったらしょっちゅう夏なんで? それでええんか? 俺、仕事さぼってるって思われへんかな?」
「太陽っていっても、一人のクマでもある。誰が仕事さぼってるなんか言えるか。こっそり来たらええねん。体温、思いっきり下げることもできるやろ? 雨とか夜やと太陽も見えへん。太陽のダミー用意するとか、できんか?」
「おっ、おお……すごいな。俺、お前のこと見くびってわ。ただの臭いおっさんやと思ってたけど……こんなにたくさんアイディア出せるアイディアマンやったやなんて……できる。できるよ! お前の言ったことのほとんどが」
 くま母さんは体毛を元に戻し、隼人君を優しく解放した。
「……ごめんな。俺、ちょっと興奮しすぎた。一緒に宇宙行こうなんて言って、ホントにごめん」
 くま母さんがまさか詫びるとはな……よっぽど隼人君が大切な存在やと見える。
「あの……これから遊びに来てええかな? 隼人の……サッカーしてる姿とか……生足とか、見たい」
 アホっ、そこで生足はないやろ。……あーあ、隼人君に気持ち悪がられんで。体毛で拘束したんもはやまったな。
 まだ福沢さんの効果が残ってればええんやけど……。
 ――ゴクリ。
 一同、隼人君の返事を待った。そして、彼から出た言葉は、
「うん……またね。くま母さん!」

 立派やなぁ……あんなに思いきりセクハラされたのに。
 くま母さんはその言葉を聞いて涙。もうドバドバ流して洪水みたいになっている。
「おおおお、流される~!!!」
 変な話や。天候は思いっきり晴れやのに、なんでこの公園だけ洪水なってんねんって話。
「うれっ、うれっ、うれっ……嬉しいぃ~!!!」
 くま母さんは隼人君に飛びかかった。
 あっ、……まさかまだ未練がましく宇宙に連れて行く気かいな。さっき反省したばっかとちゃうんか。
 くま母さんは体毛ポケットからケータイを取り出し、隼人君を激写!
 ……わずかな時間に三十枚ぐらい撮っただろうか。
 そのままくま母さんは上空へと飛んでいった。……すると、すぐに洪水は収まった。
 たぶん洪水なってるところだけ急激に気温を上げて蒸発させたんやろう。くま母さんの力を持ってすればそれも可能やった。
 ワシたちは洪水に流されて道路に行くこともなく、ケガはなかった。
 すけちゃんはけっこう水を飲んだらしく、公園の隅で倒れていた。その、呼吸が……ちょっと危なかったかな。
 でも、心臓マッサージやったら無事に息を吹き返したで。
「……ふぃー、やっと帰ったわ」
「すごかったの……くま母さん」
「ああ、帰るところ写メ撮りまくるところが変態そのものやったやろ……」
「くま父……くま母さんの悪口は……」
「ああ、たぶん大丈夫や。もう太陽の所定の位置に向かってまっしぐらや。……たぶん、ここの声は聞こえへん……はず」
 しかし、マジで大変やったな。もうワシの部屋も普通の気温に戻ったやろ。
「よし……帰るか!」

 これからもワシのちょっと変わった生活は続く。
 すけちゃん、さつき、隼人君、くま母さん、マサオ、足利……それに警察。
 たぶん今まで以上の困難も出てくるはずや、きっとな。
 でも、ワシは負けへん。ワシにはたくさんの友達がおる。知恵もある。屁の特技もある。
 ワシに会いたい奴おったらいつでも来いや。たいてい、マンションか公園か、スーパーかコンビニにおるから……。
 さて、明日は何して遊ぼかな。くま父さん、元気です!