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サイコー君のくま父さん

くま父さんがアニメ化されるまでアピールするぞ! オリジナル漫画・ラノベ作品を大量に公開中!

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『玉碁高校 アイラブ・シンブン』 その8

  4 勝つアイディアとは

 部数を伸ばすためにはなにをすればいいのか。俺の考えつくことなどたかが知れている。唯一の武器は新聞に対して素人だってことだ。元から新聞に携わっていた人間と違い、垢抜けしていない。考えろ、読者目線で……。
 とはいってもほとんど読者じゃねぇわ、俺。だって読んでないもん。新聞を読まざる者だよ。高校生の大半はそうさ。ここは原点に一度戻る必要があるな。
 俺は読んでいないが家には新聞がある。これを読んでなにか攻略を見つけよう。
 ……新聞を読むこと十五分。
 パラパラと読んでみたけど、特別面白くは感じなかった。やっぱり学生だったら玉碁新聞のような校内新聞のほうがいいわ。でもなんで一般の新聞ってつまんないんだろう。少しでも面白いところなんてあったかな。なんて春香には言えねぇな。そうだ、ウチがとってる新聞、春香の販売店のとこでとろうかな。彼女が毎朝ウチに新聞を届けにきてくれるのか……。
 俺は毎朝家の前で待っているんだ。そして、「おはよう、いい朝だね」なんて挨拶をする。毎日……いいかもしれないな。おっと、脱線してしまった。妄想している時間なんてない。部長にあんな大きな口を叩いてしまったんだ。それなりの成果を出さないと殺される。
 そして俺はもう一度新聞を読むことにした。今度はちょっとでも面白いと感じたところだけだ。
 すると、あるページで手が止まる。後ろから一ページめくったところにそれはあった。四コマ漫画だ……。
 四コマは子どもが読んでも面白い。しかし新聞にはなぜこんな四コマ漫画が掲載されているんだろう。子どもが興味を持ってくれるため? よくわからないな。
 俺はさっそくググることにした。すると以下のことがわかる。
 新聞漫画というのは元々一コマの風刺漫画が最初のようだ。明治期、直接文字で権力批判をやるとたちまち弾圧を食らうので、漫画にして時の権力者などを茶化し、間接的に皮肉っていた。
 現在でも四コマ漫画とは別に、朝刊に一コマのイラストみたいなのが週に何日か掲載されることがある。これは昔の風刺漫画時代の名残らしい。
 その後、大衆文化が華開くにつれ、新聞にも娯楽的な要素が積極的に取り入れられるようになり、今のような四コマ漫画が掲載されるようになった。
「これならいけるっ!」
 拡張部の新聞にはこの四コマ漫画は載っていない。きっと当たるぞ。

 翌朝、俺はさっそくある部室を探し始めた。そこは漫画部。
 そういう部活があるのだろうか。金持ち部とかノリ部とかワケのわからん部があるぐらいだから漫画部ぐらいはあるだろう。しかし校内では一か月の間に十の部が誕生し、それと同じ数ほど毎月消滅しているという混乱具合だ。今、どこに何部があるのか全然わからん。
 生徒数自体はそれほど多くないんだが、一人が掛け持ちしている部の数が多すぎる。中には二十以上の部活を掛け持ちしているというツワモノもいるそうで。
 職員室には部活の実態を明らかにしている資料があった。これは毎月一回更新される。この情報なら確かだ。
 職員室に着いた俺は分厚い資料を手にして、その場でページをめくった。漫画部……漫画部……あ! あった!
 漫画部は存在していた。長年続く、歴史ある部活だった。
「部室は一年校舎か。もしかしたら朝から描いてるかもしれねぇぞ。行ってみるか!」
 二年生が一年校舎を歩く。それだけでちょっと、こっ恥ずかしい。
 そしてバッタリと出会うあの女。それはナッツだった。
「ん? 宗太郎。あんたなにしてんの? ここ一年校舎よ。ロリコン?」
「待て。一年校舎にいるだけでなんでロリコンになる? 飛躍しすぎだ、バカ」
「じゃあなんの用でこんなとこに来てんのよ。……あー、もしかしてわたしに会いにきたの? 部長には部室に来なくていいって言われてんもんね。宗太郎、あんたこの歳でロリィはダメよ」
「ロリから離れろ。お前、それ自分で子どもだって言ってるようなもんだぞ。少しは嘆け」
「嘆けだなんて……そんなこと言われたの初めて」
「漫画部ってのが一年校舎にあるんだ。知っていたら案内してくれよ。どうせ授業が始まるまで暇してるんだろ?」
「うぅ、暇は余計だけど付き合ってあげるよ。で、なんで漫画部なの? ……もしかして新聞拡張部、やめるの?」
 こいつ、なんて寂しそうな顔してんだよ。もし俺が新聞拡張部を辞めたら、こいつはもっと寂しい顔するんだろうな。
 大丈夫だよ、ナッツ。俺も拡張部が好きだ。辞めるなんてことはしない。
「報道部に勝つためにね。ほら、部長に考えてこいって言われてただろ。新聞に四コマ漫画つけてみようと思って。で、漫画部にお願いに行くところさ」
「あぁ、そういう……でも、そんなことぐらいウチの部長が今まで試さなかったと思わない?」
 うっ! ……確かにそうだ。部数に貪欲な部長がこんなこと試さないわけがない。だとしたら四コマが超面白くても読者は増えない?
 考えてみれば簡単なことだった。四コマが読みたければ四コマのコミックスを買ったほうが手っ取り早い。古本屋に行けばいくらでも百円で手に入る。
「し、しまった。こんなに簡単なことに気がつかなかったなんて……」
 よろよろと倒れそうになり、壁に手をついた。
「……大丈夫? でも、やるだけやってみたら? もしかしたらだけど売れるかもよ。三部ぐらいだったら」
「三部だったらいいよ。プロの漫画家部とかないかな。プロレベルだと売れるだろ」
「たぶんそんな人いないと思うよ。……おっと、そろそろ授業が始まっちゃう。じゃ、わたしはここでー」
 ナッツは自分の教室へ向かってしまった。やっぱり無理か。漫画部による四コマ漫画

 俺はなんとか部数を増やしたい一心で授業なんてまるで上の空だった。考えることは部数のことばかり。
「――で、あるから。ここはこうなり、あそこがこうで……おい、笹宮。どこ見てんだ? 笹宮! おいったら!」
 ――はっ! ……いかん。考え事をしていたらいつの間にか眠ってしまった。一限目は担任の現国の授業だ。
「すみません、ちょっと考え事をしていたもので……」
「考え事ぉ? なにか悩んでいるのか?」
 言っていいものだろうか。こんなところで。
 でも、現国と新聞だ。まるっきり関係ないわけでもない。ダメ元で聞いてみるのもいいかもしれないな。よし。
「先生、新聞の良さってなんなのでしょうね?」
「はぁ? 新聞だぁ?」
 春香が口をあんぐり開けて俺を見ている。いくらなんでもこんなことを聞くのは唐突すぎたか。しかし先生は俺の質問に頭をひねってくれているようだ。そして出た答えがこれだ。
「先生は小説を楽しみにしているけどな……」
 新聞小説! 確かに、そういうのあるな。ウチの新聞にはそれがなかったはず。よし、昼休みになったら小説部を探そう。文芸部かな。同人誌でも小説を書く人はいる。いや、今の時代だとラノベか? まあいい、小説だ。面白い小説を載せよう!
 ――そして昼休み。
 俺はまた職員室に来て、小説部らしい部活動を探した。そしたらいくつか出てきたわ。で、俺はラノベ部の部室に行こうとした。……えっと、場所は二年校舎か。やった、俺の教室から一階上がるだけだぞ。近い近い♪
 そんなとき途中、階段でばったり出会ってしまった。椎名さんに。
「あ、椎名さん。今から部活? ……って聞かなくてもそうだよね」
「笹宮さんは? 部室に向かっているのですか?」
 椎名さんが優しい笑顔で俺に話しかけてくれる。このおっとりした感じがなんとも癒されるな。
「うーん、ちょっと覗いてみたい気持ちはあるんだけどね。でも、まだ拡張部を救うアイディアが出てないから。そんな調子で部室に行っちゃうと部長が……ね」
 二人とも苦笑いだ。部長の怒りを買うのは怖い。
「あ、でもアイディアがまったくないことはないんだ。今だってラノベ部に行こうとしていたところなんだ」
ラノベ部……? もしかして笹宮さん。あなた、拡張部を辞めてラノベ部へ?」
「いや、違うって。それはね……あれ? 俺、今朝に同じことを誰かに言ったぞ。……ナッツだ。これ、もしかして同じパターンか?」
 一人でブツブツ呟いている俺はさぞ不気味に思えただろう。先生は新聞の楽しみが連載小説だと言った。しかしこれも四コマ漫画と同じ理由で、小説が読みたければ小説を買えばいい。なにも新聞で読まなくてもいいじゃないかってことだ。
 改めて新聞が幅広いジャンルを扱っていることに気づいた。将棋や囲碁のコーナーもあるし、スポーツ欄、テレビ欄、天気予報……いろんなのが集まって新聞だ。
 どれかに特化させるべきではないか。
「あの……笹宮さん?」
「ごめん。新聞に小説を載せようと思ったんだけどさ。やっぱり効果ないよね?」
「ないことはないと思うけど……五部ぐらいだったら売れるかも」
 五部か。全然足りねぇな。しかしなんでこう受け答えがナッツのときとほとんど同じなのだろう。
「椎名さん、俺悪いけど先に家に帰らせてもらうわ。で、自分んちでゆっくり考える。今日は出直しだ」
 かっこ悪い。思ったより部数を伸ばすことって大変なんだな。皆が必死になるのもわかるよ。新聞の中身を変えるべきか、それとも拡張の方法を変えるべきか……まるでゴールのない迷路のようだな。頭がこんがらがってきた。