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サイコー君のくま父さん

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『ネクラだとなぜかモテるんです』 その8(完結)

  3 文化祭

 文化祭当日、早朝にボクと高倉さんと担任の先生が、旧校舎の前で立っていた。
「この鍵と鎖を切ったらいいんだな?」
 先生は大きなはさみを持っている。それは鉄などの金属を切ったりするものに使うやつだ。
 たまに生徒が自転車の鍵をなくしたときに、鍵を壊すために使われていた。
「ええ、お願いします」
「しかし、こんな校舎でよく使ったもんだ。その……女神像?」
「はい。ボクと高倉さんの傑作です。きっと今日の文化祭の目玉になりますよ」
「大したもんだよ、お前らは。この旧校舎だって、お前らの説得で再利用されるようになったんだろ? その……なんだ?」
「部室にするんです。部室がないクラブってけっこうあるんですよ。いろんな先生たちに説得するの、すごい大変でした」
「あー、そうだった。よく説得できたもんだよ。まだ一年生……それも半年ほどしか在籍していないもんがな」
「先生? もう何でもいいですから、早くその鍵と鎖を切って下さい。完成しているとはいえ、外で組立なければいけないんですよ。もたもたしていたら、間に合いません。わかってるんですか?」
 ぷんすかして先生をせかす、高倉さん。
 ボクじゃあ、こんなことずけずけと言えないや。さすがだ……。
 ガチッ……ガチンッ!
「……よし切れたぞ」
 耳につんざく金属音が鳴って、鍵と鎖は切られた。これで中から女神像のパーツを外に運べる。
「さ、急いで! 猛ダッシュで運ぶわよ!」
「うん、わかった!」
「あー、先生も手伝ってやろうか?」
「いいです! これはわたしたち二人が作ったんですよ。最後まで二人で完成させます」
「あー、そうか。わかった。がんばれよ……っとそうだ。一言だけいいかな?」
「え……どうぞ?」
 ボクも高倉さんもきょとんとした。先生、何を言うつもりなんだろう?
「お前ら、いい顔しているよ。入学してから先生はお前たちのことをずっと見ていたが、今日が一番いい笑顔している。お似合いだ。……自由の女神、楽しみにしてるからな」
 そう言って、先生が去っていった。

 もう……言うなら文化祭が終わったあとにしてよ。
 ボクはいいけど、きっと高倉さんが……
「おっ、お似合い? ……何、言ってんのよ、あの先生は? ちょっと……勇戸君、勘違いしないでよね!」
 ……ほら、ツンモードになった。
 これで文化祭が始まる時間まで間に合うのかな?
 今が六時半だから、残り二時間半。
 ギリギリだ。ピッチを上げないと!
「運ぶよ! 高倉さん、急いで!」
「ちょっと! 否定しなさいよね! そりゃあ勇戸君とは確かに付き合いは長いけど、正式に付き合ってるとかそんな事実はまだ……」
「いいから! 手伝って。口より手を動かす。じゃないと間に合わないよ!」
「……わかってるわよ、もう」

 ――そして、とうとう文化祭が始まる時間がきた。
 その五分前にようやくパーツの組立が終わる。
「はぁ、はぁ……何とか、間に合ったようだね」
「本当、もうこれ、キツイ……でも何とか終わったわね」
「へ、へへ……見てよ。この女神像。すごくない? 作った本人たちが言うのも変だけど」
「ううん、変じゃないよ。この出来なら胸を張って誇れるよ」
 誇れる……か。ボクは今まで誇れるものなんて作ったこともないし、何かを達成したこともない。
 高倉さんがいたから、ボクは初めて誇れるものが作れたんだ。
「さあ、ぞろぞろと人が集まってきたわ。準備はいい?」
「うん、大丈夫だよ」
 自由の女神は大きな布……カーテンを何枚も作ったものをかぶせて、その形が見えなくしている。
 九時になると、その布を一気に取るんだ。
 だから、もう像の前にはたくさんの人が来ている。
 
 九時まであと十五秒。カウントダウンが始まった。
「皆、いくよ。せーのっ! 十五、十四、十三、十二……」
 皆、一体となった。最大の盛り上がりだ。まだ文化祭は始まっていないのに。
 気づけばもう二百人以上が集まっている。
「四、三、二、一……」
 ……これがボクたちの誇りだ。
 元ネクラと、ネクラ好きのどうしようもなかった二人の。
「ゼロォ――――――――――――!!!!!!!!!!」
 巨大なカーテンを取り、女神の姿が現れた。

 ……そこに生まれたのは静寂。
 皆、感動でしばらく声が出なかった。
 泣く者もいた。そういうボクも、高倉さんも涙していた。感動の涙。
 この達成感は今までにないことだ。当然だ……本当にいい出来だった。

 ワアアアアァァァァァッッッッッ!!!!!!
 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……
 
 歓声が上がる。そして惜しみない賞賛の拍手。
「すげえ……すげえよ!」
「どうやってこれ、作ったの?」
「……すっげー。でけえな、これ」
「何これ、わたし初めて。こんなの」
「これを二人で作った? マジで……」
「すごすぎるって、これ!」
 皆、この作品を褒めてくれた。感動してくれた。
 ボクたちにとってこれほど嬉しいことはない。
「大成功だね、高倉さん」
「うん。やったね」
「あのさ、高倉さん……」
「ん、何……?」
「ボクたち、お似合いだよね」
「……うん、そうだね」
「これからも一緒にいてくれる? 文化祭が終わっても……」
「ええ……ねえ、勇戸君。話があるの。それも大事なお話」
「ボクもだよ」

「「付き合って下さい!」」

 ……この日、ボクたちは正式にお付き合いすることになった。
 文化祭に告白だなんて、ロマンチックだよね。
 これからもよろしくね、高倉さん。