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サイコー君のくま父さん

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『くま父さん』 その9

  4 整骨院に行く

 ――これは萌え大会から翌日のことや。ワシ、なんか急に痛みを感じてきたで。
「む……腰が痛い」
 昨夜、趣味のネット将棋をずっとしてたんが仇になってしまったか。たかが六時間程度で……。
 確か長時間同じ体勢でいることは腰に負担をかけるってどっかで聞いたことがある。まさにそれや……。
 バイト先のおばはんが隣町に安い料金で治療してくれるところがあるって言ってたな……。ま、金もないし、そこでいいか。さっそく行ったるか。
 ――ということで徒歩二十分。
 ワシは田村整骨院ってとこに行ってみた。
 小さい建物。オレンジ色の外観が目についた。隣が散髪屋か……帰りに寄るのもええかもな。向かいには病院があるし、バス停もほんの目の前にある。立地条件はなかなかよさそう。
 自転車置場がないんがキツイかな。
 まあ、整骨院っていったらこんな感じなんやろ。さ、入るで……。
 建物に入るとまずは玄関。ここで靴をスリッパに履き替えんねんな。でも、ワシはクマやから玄関に置いてるタオルで足を拭いたで。あ、これクマの世界やと常識な。
 二メートル先には受付。……なんと短い距離。
 そこに行くまで長椅子が一つと丸椅子が三つ。……ここが待合室? やねんな。基本六人しか待っとかれへんわけか。土地が狭いってのは大変やで。
 ……で、患者はワシ一人だけか? 今、四時やぞ。確かに整骨院に通う人って老人が朝早く来るイメージがある。それ以外の客っていったら、サラリーマンの仕事帰りの人ぐらいのもんか。
 で、まだ四時やからサラリーマンもおらんっちゅうことやな。待ち時間ないからワシとしてはええけど。
「初めてですか?」
「ああ、頼むわ。健康保険証やったら持ってきてるから……はい」
 ワシは受付の人に健康保険証を渡した。
「……はい、けっこうですよ。今日はどうされましたか?」
「うん、ネット将棋やりすぎで腰と肩が痛ぉーて……たまに脇腹らへんも痛くなる」
「そうですか、では案内します」

 ……なんか、ベッドみたいなとこで座っとけ言われたで。
 先生、すぐ来んのかな。なんかこの建物にはおらんような気がする。……だってホンマにここ狭いから。
 飯でも食ってんのかな、なんて冗談で思ってたら……、
 ピポパ、ピポパ……。
 おい、受付の人……先生呼んでるやんけ。近いから行動とか話してる内容、全部わかんねんやけど。
 まあええか。先生も飯ぐらい食いたくなるわな。コンビニでも行ってんのか。
 十二時から四時まで休みやから、その間に食っとけよと思ったけど、そんなんワシ、口に出さへんで。偉いやろ。
 変なこと言って、その腹いせに手ぇ抜かれたりでもしたらこっちが損やからな。黙っとったるか。
 しかし、いつ来んねんや。ワシ、これでも腰痛いって受付の人に言ってんで。
 座ってお待ちくださいって言われたけど、横になってもええやんな?
 ……一分間がんばって座ったけど、しんどくなったから勝手に横になった。
 ――で、眠気が襲ってきた頃にようやく先生がやってきた。
「こんにちは、くま父さん……ですね?」
「あ、ああ……おはよ。先生……ですね?」
「はい。腰が痛むんですか?」
 三十後半から四十代ってぐらいか。男の先生やな。でもなんで膝立ちしてんねや? 普通に立って話しかけてくれたらええのに。ちょっとこの位置関係やと会話しにくいぞ。
「そうなんですよ……なんとかして下さい、先生」
「わかりました。では初めに電気を流させていただきます。もし痛いとかありましたら言って下さい。お願いいたします」
「え、うん……お願いいたします?」
 なんや? 電気を流しますでいいやんけ。流させていただきますってなんやねん。
 お願いいたしますってなんやねん……この病院、ちょっとおかしいんとちゃうか? ……ま、料金あんまりかからんのやったら我慢するか。
 腰に八つぐらいの変なゴムみたいもんをつけ、そこから電気が流れる。
 まるで誰かに揉まれてる感じ。……あー、気持ちいいわ。ずっとこうしていたい気分やな。
 ――十五分後。
 電気の治療が終わり、先生がやってきた。
「どうですか、くま父さん。痛くはありませんでしたか?」
「ああ、大丈夫やで」
 ……痛かったら言ってるって。わざわざ聞くなや……。
「次に体をほぐしますね。仰向けになっていただけますか? よろしくお願いいたします」
「はいはい……」
 仰向けになってくれでええやろ。誰がそこで否定すんねん。
 よろしくお願いされちゃったわ……。
 先生がいきなりワシの首を持った。
 ……なにすんねやろ、この人。
 すると、先生は急に――、
 ゴキンッ!
「あがっ!!!」
 ……ビックリした。いきなり首の骨折ろうとすんなや。キレんぞ。
「こらっ! いきなり殺す気か?」
「おっと、力を入れないで下さいよ。力を入れたら危険です」
 なんやこれ、治療の一環かいな。せやったらゴキンってする前に言えよ。お前流でいったらそこは、「首をゴキンとさせていただきますが、よろしいですか? お願いいたします」……やろ。
「ちょっと落ち着きましょうか……」
 いや、お前がな。
 言うん忘れとったやろ。クソ! マジで死んだかと思ったわ。
「……はい、もういいですよ。落ち着きました(お前はどうやねん?)」
「では……」
 ゴキン!
「痛たたたたた……!!」
「……力、入れないで下さいよ」
「痛いねんって! ゴキンって骨が鳴るぐらい首の角度曲げてんねんで? 声出すに決まってるやろ!」
「少し落ち着きましょうか……」
 くそっ! だんだん腹立ってきた。だからお前が落ち着けって言ってんねん。首、変な角度に曲がって痛いがな……。
「じゃあ次、いきますよ」
「うん……ええよ」
 先生がおもむろにワシの両手をクロスさせた。で、体を片側に向かせ、先生がワシの上に上半身を乗せる。いきなり。
「ぐはっ!」
「……力、抜いて下さい」
 ごほっ……息ができへん。いきなり圧迫された。
 これ、危険やで。今から体重乗せますぐらい言えや。なんでいつもやることいきなりやねん。患者、ビックリするやんけ。
「ごほっ、ごほっ!」
「どうもくま父さんはこういうの苦手なようですね。じっとしていられない」
 だから……事前に何するか言えって。心の準備ってもんがあるやろ。ワシ、初診やねんぞ。
「次は三つの機械で治療を行っていきます。ウチの女の子がご案内しますので、着衣の乱れを直したら出てきて下さい」
 マジで免許持ってんのか、あいつ。柔道なんとかってやつ……まあええか。残す治療はあと機械だけやろ。
 初めの電気のビリビリは気持ちよかったからな。さすがに機械が首、ゴキン! はせえへんやろ。
 でも、女の子ってなんやろ。いきなりキャバ嬢とか来んのかな……。

 女の子は受付の人やった。
 この人、もしおばはんやったらなんて言われてたんやろ?
「女性がご案内します」「熟女がご案内します」「おばはんがご案内します」
 ……なんや、ようわかれへんぞ。
 ――一つ目の機械。(正確に言ったら初めの電気のビリビリがあったから二つ目やけど)
 横になって下からマッサージをしてくれるっていうやつ。
 これも気持ちよかった。たまらん!
 これを背面マッサージと名付けよう。
 でも、受付嬢の口調が、「させていただきます」「お願いいたします」っていうのが、ちょっとイラッときたで。

 ――二つ目の機械。
「背中を温めますので、椅子に座って入り口側を向いていただいてもよろしいですか? お願いいたします」
 ん? なんや、ようわからんぞ。クイズみたいやな。
 そもそも椅子はどこにあんねん。
 きょろきょろ視線を移動させるとようやく見つかった。ワシのすぐ側にあった椅子や。
 でも、この椅子……めっちゃ小さいで。ま、ええわ。座れ言われてるから座ろか。
「おぉ~っとっ! 危ない!」
 なんか中心が盛り上がってるから弾き返されそうなった。前のめりになってしまったで。これは危ない……。
 ワシやったからまだよかったものの、これが高齢者とかやったらやばかったやろな。
 言葉遣いに力入れてる病院みたいやけど、なんか間違ったところに力入れてるような気がする。逆にその言葉遣い、うざいし。
 まず椅子とかそういうとこ改善せぇよ、みたいな……。
 で、機械の感想やけどまったく意味ない感じ。
 肩らへんがポワーって暖かくなっただけやった。後ろから光みたいなん当ててるからよう見えへんしな。
 どんな感じで光当ててるんか説明してくれ。見えへんこっちとしては不安や。

 ――三つ目の機械。
 肩と脇のところにひもをかける。これを左右両方でやる。
 あとは機械をブルブル振動させるとこっちもブルブルするってわけやな。……これも別に気持ちいいことなかった。
 で、すべての治療が終了。合計四十分ぐらいで終わったかな。
 一応、受付嬢と先生に礼を言ったんや。あとはお会計だけやで。

 お会計にはなぜか先生がおった。
 おっと、てっきり料金の支払いは受付嬢がやってくれるんかと思った。なんでお前こんなとこに座ってんねん、みたいな。
「お疲れ様でした。また、痛くなったらいつでも来て下さい」
「はい」
「料金のほうですが……ちょっと高いですよ。初診ということもありまして……」
 えっ、高いん? ……マジ? バイト先のおばはん、安いって言ったのに。
 なんぼ取られんねや? 医者が高い言うぐらいやからな。三千円? 五千円?
 ワシ、さっき金下ろして来たばっかやけど、貧乏やから財布の中七千円ぐらいしか入ってないぞ。これで足りるんか?
 しかし、迂闊やった。なんや、全然安くないやんけ。人の話なんて信じるもんじゃないな。効き目あったん、ビリビリと背面マッサージだけやで?
「あの……いくらですか? ……ゴクリ」
「高いですよ……五百円です」

 なめんな。
 ……ワシ、マジで口から出そうなったわ、このセリフ。
「ああ、あと昨日来たということにしておきましょう。そのほうが理由がなんたらかんたらで安くできるんですよ。ではお大事に」
 さらにワケのわからん時空間設定されるとはな……。
 どこをどういう理由で安くなったんかようわからんがまあええわ。わからんことが多すぎて、逆にわかったような気になってきた。末期やで。
 領収書もくれんかった。謎の病院やった。
 今度来るかどうかは……またそのとき決めるか。
 確かに料金は安かった。おばはんの言う通りやった。でも……ちょっと変わったとこやったで。