サイコー君のくま父さん

くま父さんがアニメ化されるまでアピールするぞ! オリジナル漫画・ラノベ作品を大量に公開中!

にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へ ゲーム・古本・DVD・CD・トレカ・フィギュア 通販ショップの駿河屋

『ネクラだとなぜかモテるんです』 その1

第一章 ネクラ

  1 女神が来たんだ

 ボクの名前は陰見勇戸(かげみゆうと)。高校一年生になって二週間……。
 中学生のとき、ボクは引きこもりだった。学校はほとんど行っていない。
 でも、高校生になったら変わろう。そう思って勇気を出し、高校に進学することを決めた。
 特に勉強ができないとかそういう問題ではない。どうも集団生活に慣れない自分がいてる。
 友達を作らなきゃって思うと、息が苦しい……。
 正直に言うと、一人の方が断然楽だ。
 でも高校でずっと一人でいるなんて、そんなことできない……よね?
 高校も無理だったか。
 こんなボク、もうどうしようもないよ。
 これからどうするの? どうすればいい? ……わかんないよ!

 水曜日……だったかな?
 曜日なんて関係ない。ボクの一日の過ごし方はこうだ。
 まず起きるのが、お昼の十二時頃。それからご飯を食べて、テレビを観る。……どれもつまらないものばっかりだけどね。
 テレビに飽きたらゲームや、漫画、ネットなどをして過ごしている。
 六時になると晩御飯だ。食べているときが一番幸せかもしれない。
 父さんや母さんは、ボクが引きこもっても何も言わない。なにせ、小学校四年生ぐらいのときから、ボクは引きこもるクセがついた。
 だから、「またか……」といった感じなんだ。両親もボクも、もう諦めている。たぶん、この性格は一生治らないのだろう。
 晩御飯を食べると、また同じようにゲーム、漫画、ネット……。
 夜中の三時ぐらいになったら眠たくなるので、自然の成り行きに任せて寝ている。
 もちろん目覚ましなんかかけない。寝たいだけ寝るのさ。こんな生活、人によっては羨ましがられるかもしれない。
 でも……ボクは本当は……外に出たいんだ。皆と一緒に勉強や遊びや……でも、わかっている。ボクがそれすらもできない、どうしようもない奴なんだって。

 この日、ボクはいつものように漫画を読んで過ごしていた。
 もう何度も読み返したものだ。もう十回は読み返しただろう。内容は覚えているが、時間を忘れられるので漫画を読むことは嫌いではない。
 時刻は……昼の三時ぐらいだろうか。
 小学生や中学生の帰宅姿がちらほら見られる。
 ……ボクもこの中にいる側だったらなぁ。
 
 ピンポーン……
 インターホンが鳴った。
 一階には母さんがいるので任せておけばいい。
 ボクは引きこもりだ。学校に行かなくなってから二週間、一度も外出はしていなかった。一階に下りるのも食事をするときと、トイレに行くときだけ。お風呂は二日に一回、夜中に入っていた。
 誰が来たのだろう?
 どうせ新聞の勧誘かMHKだろう。それとも回覧板かな。どちらにしてもボクには関係ない。このまま漫画を読むとしよう。
 少し止めていた指を動かし、次のページをめくろうとしたところ……
「勇戸。あんたの友達来てるわよ」
 ……それは母さんの声だった。
 母さんは二階にいるボクに聞こえるように声を張っていた。
 友達だって?
 何かの間違いじゃないか?
 中学生のときは、たまにだが同級生が学校のプリントを渡しに、家にやってきたことがあった。
 ……友達ではなく、あくまで同級生だ。嫌々、それをしているのが目に見えてわかったよ。
 ま、中学校からだったら家は近いからね。
 でも高校生でそんなプリントを渡しにわざわざ誰かが家に来るなんて初めてだ。聞いたこともないぞ。
 そんな物好きな人がいるんだ?
 同じ中学校出身の子は何人かいたが、特に仲が良かったという事実はない。ボクも向こうも、たぶん話したことさえないぐらいだ。
 だからボクはこの突然の訪問者が誰なのか全くわからなかった。
 嬉しいというより、不思議だった。……不気味とさえ思った。
 魂胆がわからない。ボクに関わるメリットがない。
 まさかこんなことで内申点でも上げようと思っているのか?
 ふざけるなよ。そんなことで利用されたなんて思ったら、腹が立って仕方がない。
「勇戸、下りてこないのー? かわいい女の人よー」
 また、母さんの声が聞こえた。
 女……女の人?
 ……それにかわいいって。
 ボクも高校生の男子だ。かわいい女の子が家に来てくれたなんて聞くと、少しは期待してしまう。
 女の子と話すなんていつ以来だろう。最後に話したのは小学二年生ぐらいのときの記憶しかない。となれば、九年ぶりか!
 自分で思っても何て奴だよ。
 この機会を失うとさらにそれは更新され、軽く十年を突破するだろう。
 何の記念だ。まさかこれから一生、女の子と話をしないなんてこともないだろうが、可能性としてはゼロではない。
 ……なに、ちょっと話すだけだ。
 顔を見るだけ。だって気になるじゃないか。
 誰が、ボクなんかのために……
 それが嫌々であっても嬉しい。かわいい女の子なら、どんな理由でも嬉しい。
 ……行こう。そして、会うんだ。
 生身の人間……テレビやゲームの中なんかじゃない。正真正銘の人間の女の子だ。それもかわいい……プリティー……キュート!
 どんな女の子か、ボクの頭の中でいろいろな想像がされる。
 歩くスピードが速くなる。その子がすぐに帰ってしまわないか、心配だった。
 会いたい、見たい、できることならおしゃべりしたい!
 引きこもりを解く鍵は性への探究心だったのか。
 階段を下りるが、その途中でボクは立ち止まって相手の顔を見た。
 ……母さんが邪魔でよく見えない。
 長くきれいな黒髪が印象的だった。
 この角度、どうがんばっても見えそうにない。……やはり完全に下りるしか道はないようだ。
 ボクは今、自分の服装に気がついた。……パジャマだった。
 恥ずかしい! もう少しまともな格好をしてくればよかった。
 相手が男ならどんな格好でもいいが、かわいい女の子だと恥ずかしかった。
 でも、ここまで来て引き返すわけにもいかない。きっと、向こうもボクが下りてきているのに気づいているはず。……足しか見えていないと思うけど。
 互いに顔がわからない。
 本当に……誰なの?
 息が荒くなってきた。久しぶりの好奇心。外からの刺激。
 ボクは階段を下り、玄関のところにやってきた。
「……遅かったわね、勇戸。じゃ、母さんはもう行くよ」
 行くよ、というのは家事に戻るという意味だ。どこか外に出かけるという意味ではない。
 ……家事でもないか。
 リビングの方からテレビの音が漏れていた。ボクのテレビ好きは母さんの遺伝によるものなのかな。
 あ……そう考えている間に一対一。
 かわいい子と一対一……。
 彼女の顔を見るには少しの勇気が必要だった。
 別に興味ありませんよ、という感じでボクは彼女を見た。

 ……きれいだ。というか、かわいい!
 彼女はパッチリとした目をしていて、鼻筋がすっと通っており、小さめな口。肌にくすみの一つもない。もちもち肌だ。
 細い首、身長は一般平均の女子より少し高いぐらいだろう。全体的に清潔感があった。
 ボクは彼女を知っている。確か、同じクラスメイトだ。
 でも見たのはほんのわずか。
 なんせボクは入学三日目で不登校になったんだからな。でも、彼女の存在は覚えていた。名前は……思い出せない。
 ホームルームで自己紹介をする機会があったが、彼女はボクの席からうんと離れていたので、そのタイミングがわからなかった。
 彼女はボクのことを覚えていたのかな。
 まさか自己紹介があるとは思っていなかったので、趣味はゲームと漫画というベタベタなオタクっぽいことを話したような気がする。
 趣味がオタクで不登校……こんなネクラ丸出しのボクの家に、何で彼女のようなきれいな人が来ているんだ?
 考えれば考えるほど謎だった。
 ボクが一階に下りて三秒間の出来事だった。……向こうもボクの方を観察するように見ていた。そして、先に口を切ったのは彼女からだった。
「やっ!遊びに来たわよ」
 遊びに来た?
 その……プリントを渡しに来たとかじゃなくて?
 ボクとはほとんど初対面のはず。学校で目すらも一度も合っていない。
 そんな奴のところに……遊びに来た?
「えっと、ボクを間違えていませんか?」
「間違えていないよ。陰見勇戸君でしょ? クラスの自己紹介でそう言っていたじゃない。趣味はゲームと漫画だったっけ?」
 彼女……そこまで覚えてくれていたんだ。
「あら、もしかしてわたしのこと覚えていない? ……同じクラスメートだってのにさ、寂しいわぁ」
 同じクラスメートでもボクは二日しか学校に行っていない。それも二週間前に行ったきりだ。
 これでどうやってクラスメートの名前を覚えていろというんだ。……そう、普通は覚えているはずなんてない。
「あの……本当に何しに来たの? ボクなんかただの引きこもりで趣味もオタクみたいのばっかだし、遊びに来たっていっても何もできないよ」
「それがいいのよ!」
 彼女はズビシと人差し指をボクの方に向けた。
「それがって……どれが?」
「そのネクラさが♪」
 ……聞き間違いかな?
 ネクラさが良い? 訳わかんないや。
 普通、ネクラだと関わる方は嫌なんじゃないのかな。
 それに面と向かってネクラなんて言われるとちょっとショックかも。
「高校生活が始まって二日目。君、休み時間にシャーペンの芯を削って、指紋を浮き上がらせていたじゃない? あれを見てゾクゾクしちゃったの」
 うわー、あれかー……確かに休み時間とか暇だったから、ずっとやっていたな。
 ……あんなところ見られていたんだ。恥ずかしくて顔から火が出るよ。
「ね、上がらせて。勇戸君の部屋見てみたい」
 いきなり名前で呼ぶの? あなたとはほとんど初対面ですから!
 名前……まず名前、教えて!
「名前は……?」
「え? そこから? ……もう、仕方ないなぁ。わたしは笑美(えみ)。高倉笑美よ」