サイコー君のくま父さん

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『くま父さん』 その4

  4 警察に行って絞られる

 ――警察署にて。
「ちゃいまんがな! だから誤解やって! 女の子助けただけや!」
 なんでワシ、取調室で取り調べ受けてるん? まるで犯罪者みたいやん。こんなに紳士なクマやのに。
「あのなー、屁の臭さは生まれつきや。そんなんで捕まえんな!」
「いや、四つか五つぐらいあったよね。罪……」
 ガタンッ!
 ――ウソやん?
 警察の人がもう一人警察に確認を取るように言ったが……なんで聞かれた警官頷いてるん?
 言ってみろや。ワシに罪があるんやろ? それ、なんなんか言ってみろや。

① 臭い罪
② 空気汚染罪
③ 屁罪
④ さっちゃんのパンツ見た罪

 ……ん? ①から③は百歩譲ってわかるが、④って何?
 ワシ……さっちゃんのパンツなんか見てないで。見てない……見てないー!!
「ワシ、さっちゃんのパンツなんか見てない! デマで訴えんな!」
 バンバンッ!
 この怒りと悔しさ、どこにぶつければええんやろか。
 ワシはとりあえず机をバンバン叩いて、身の潔白を強調。
「④に関しては先ほど本人から連絡があったんです。『わたし、くま父にパンツ見られたからもっと重い罪にしたって』って……」
「それ、満員電車で『この人、痴漢ですー!』って言って和解金狙う女子高生と一緒のパターンやん。証明できへんのやろ? なんで女の子のことばっか信じんねや?」
「では……コンビニで脅迫はしましたか? ……これも三十分ほど前に連絡があったのですが……」
「ん? コンビニで脅迫? ……アホな。そんなんするわけ……するわけ?」
 したか? そういやしたな。
 クマさんの財布……したな。
 頭の中に昼に会ったコンビニの店員を思い出す。
「……くそつ! あいつ、チクリやがった……!」
「じゃあ一か月ムショということで」
 ム、ショ?
 刑務所? ブタ箱? ……えぇっと臭い飯? 牢屋?
「あ、あの……! ワシ、コンビニのときはちょっと調子乗ってました。でも、ワシにはスーパーのバイトがあんねん。勝手に休むことはできんのや。……なあ、見逃してぇや。ワシ、ワシ……」
「いや、もうなんかそういう決まりみたいなんで……無理ですね」

 ……終わった。ワシの経歴。
 これで前科者になってしまった。屈辱や。
 さっちゃんのパンツ見た罪も適応されるそうやで。
 確かにさっちゃんはかわいいけど、こんなリスクまで犯して見るわけないやろっちゅーねん。
 最悪や……めっちゃついてないわ。

 ――一か月後。
「……もう戻ってくるなよ」
「……えぇ、戻りませんとも」
 ようやく釈放された。
 マジで一か月も監禁されたわ。……あーあ、何も連絡せんとムショに入ったからな。
 家賃とか振り込んでないし、スーパーも長期無断欠勤や。
 これ、絶対解雇されてる。
 けっこう楽な仕事で気に入ってたのに。
「最悪の一か月やった……でも、ようやく出られたんや。もー、体毛とかボッサボサやで……」
 千鳥足状態。何度も車にひかれそうになったし。
「――お、くま父さん? お久! 何やってるん?」
「ん? あー、別に。なんてことない。なんてこと……」
 友達のクマに会っても今までのこと言われへんわ、かっこ悪すぎて。
 コンビニで脅してないっちゅーねん。
 さっちゃんのパンツ見てないっちゅーねん。
 ……思い出してきたら苛立ってきたな。ホンマ、もう……。
「くま父さん、お帰りなのー!」
 前方に聞き覚えのある声が……? この声、すけちゃん?
 すけちゃんがワシの出所待っててくれた。それに……隣にはさっちゃんがいる。
「こいつ……! おまっ、さつき……なに、訴えてんねん?」
 すけちゃんはたぶん純粋にワシが戻ってくるのを待ってくれとったんやろ。優しいからな。
 ――でも、さつきはどうや? なんで来たんや?
 ……まさかこいつもワシが出てくるのを待っとった? ……まさか?
 こいつも自分なりに反省したんやろか。デマ、言ってごめんなさいって……。そういうことか?
「さつき……お前、もしかして……」
「ああ、勘違いせんとって。慰謝料取りに来ただけやから」
 慰謝、料……?
 何言ってるん、こいつ。こいつ、何言ってるん……!
「五十万で」
 さつきは手の平をワシに見えるようにして、大きく広げた。
 五十万? ……って言ったんかな、こいつ。
 五十万……ウソやろ。慰謝料? 五十万もワシに慰謝料払えって言ってんのか? パンツ見たとかいうデマだけで。
 ……いや、脅す理由はなんでもええ。こいつが今やってることはワシの毒屁をくらったことへの復讐……そう、こいつは今、金を脅し取ろうとしてるんや!
 ヨシオのように暴力とかは使わへん。その分平和やけど、その分破壊力はとてつもない。
 一気に人生を奪い去るほどの力を持ってる。
 ……こんなん、暴力で訴えられるほうがまだマシかもしれへん。
 加藤さつき……ワシはこいつのことを甘く見てた。
 助けるべきやなかった。関わるべきやなかったんや。
「五十万……ワシ、そんな大金持ってないで……持ってない」
「そう? だったらバイトを増やすなりしてお金作ってきてね♪」
 こいつ……そういうことをなんでそうあっさり言えるんや。
 ワシ、仕事嫌い。今やってる仕事も楽やけど、本当は働きたない。
 もっとお金たくさんあったらとっとと隠居生活したいねん。お金って大事やねんで。
 こんな小娘にお金の価値なんてわかるわけないやん。
 お金は身を滅ぼす……お金に執着ばっかりしていたらあらゆるものをなくす。
 それは友情であったり、健康であったり、家族や恋人だったりする。
 お金を扱うにはそれなりの覚悟っちゅーもんが必要なんや。お金ってそれほど怖いもんなんや。時には最大の武器にもなる。
 戦争の理由がお金であることはもうわかってることや。
 お金……それは命でもあるんやで?
「ワシ……時給八百五十円しかない。八百五十円で五十万稼ぐってどんだけ大変か知ってるか? 五千円にしろ! ……五千円でも十分キツイねん。痛いねん。……それでええやろ? それで許してくれ。別にお前に屁を嗅がせようと思ってやったわけやないんやぁ……」
「五十万!」
 さつきは一歩も退く気はない。
 ……恐ろしい。これが究極のSってわけか。
 ワシ、さつきのこと誤解してた。ここまでのSやとは思わんかった。
 顔がかわいいだけの悪魔や!
「払うしか……ないん?」
「今度はいつ出てこれるかわからんぞ」
 ……諦めるしかなさそうや。
 ワシはすけちゃんからもらったクマさん財布を開ける。
「……やっぱり。魔法のように財布の中に五十万入ってる……そんなことないか。四百七十円しか入ってないわ。小銭だけやし……」
「さっさと払わないと利子とるで! 今、お金がないんやったら月末五万円ずつ! 十回払い!!」
「ひ、ひいぃぃ――――!!!」

 ――そして、さっちゃんは嵐のように過ぎ去っていった。
「……あの悪魔、ようやく帰ったな。言いたいことだけ言って……」
「くま父さん……」
「また、ムショに戻るのは嫌や。とにかくお金作らなあかん。……スーパーの仕事クビになってないか、確かめるか……時給八百五十円とはいえ、楽やしな。毎月さつきに払う分は新たにバイトでもするか……」
 でも、こんなんになるんやったら人助けとかせんかったらよかった。
 ワシ、もう人を助けることなんか二度としたくない。もう二度と……。
 人間は鬼やと思ったほうがええねん。金をせびる鬼や。
「くま父さん、クマさん財布使ってくれていたんだ?」
「すけちゃん……」
 人間が鬼……それは言い過ぎやった。
 同じ人間でもすけちゃんのような心優しい子だっているんや。鬼はさつきだけや。
「ありがとう、すけちゃん。ワシ、バイト増やしてさつきに五十万渡すことにする。ワシ、ムショにいてる間、ずっとすけちゃんと会われへんかったやん。辛かったで……」
「うぅ、ボクも……早くくま父さんに会いたかっだぁー」
 涙と鼻汁をボタボタと垂らすすけちゃん。
 この子の泣きグセはまだ直ってへんなー。この子にはまだワシが必要や。それに、ワシにもこの子が必要や。
 すけちゃんがいるからワシは人間全てを嫌いにならずに済んでいる。

 すけちゃんと帰路についていると、細い路地から自転車に乗ったチビッコが!
 まだ小学生にも通っていないようなチビッコ、しかも二人。
「危ないやろうがっ!!」
 と、同時におっさんの怒鳴り声……。
 ――危ない? そら危ないかもしれんけど、こんな狭い道を車で走ってるほうが悪いんちゃうん? 見通しの悪いとこは全部通行封鎖せぇよ。
 お前が怒鳴るな。お前はここを走るな。
 イラッときたで。運転手はジジイやった。仕事は引退して年金暮らしなんやろ。
 未来ある若者から高い税金取って、そこから支払われる年金。
 生まれたときから年寄りを支えなあかんチビッコたち。
 本来やったら、「すんません、がっぽり年金いただいて。生まれたときから国の借金背負わせてごめんなさい」――と、こう言うのが筋やろ?
 それを元気に遊んでるチビッコに向かってそんな暴言……ああ、腹立つ。
 子どもは眉をひそめてその場を過ぎ去った。この一件はこれで終わったかのように見えた。が――、
 キキィ――――ッ!!
「うぉいっ! 危ないやろがぁーっ!!」
 今度は三歳ぐらいの女の子に怒鳴ってる。
 ……だからこんな細い道、車で走んなって。自分の足で歩け。そっちのほうが健康的やろ。
 この近くには公園あるし、幼稚園も小学校もある。チビッコが多い地域なんや。それわかってて走ってんのか?
「危ないやろが、ああっ? 飛び出すな言うとんねん!」
 そんなチビッコに説教してもわかるわけないやろ。
 きょとんとしてるやんけ。困ってるやんけ。……泣きそうなってるやんけ。
 助ける……べきか?
 でも! ワシはさつきを助けた結果、一か月ムショに入って、挙句には五十万もの金を支払わなあかんようなった。……どうする?
「……くま父さん」
「すけちゃん……?」
「あんまり深く考えないで。さっちゃんの場合は特例なの。だから、くま父さんの普段のままでいてほしいの、ボク……」
 ……そやな。すけちゃんの言う通りやわ。
 ここでチビッコを見捨てることは簡単や。でも、後で嫌な気持ちだけが残るやろ。
 それにここで見捨てるようなワシはワシではない。
 街の人気者、くま父さん。皆から愛されて、頼られる……。
 だからきっとこれからさつきも警察もわかってくれる。素のままのワシでいよう。

 ワシはずんずんとジジイに近づいていったで。
「こらぁっ! チビッコ、怖がってるやんけぇ! おら、ジジイ! お前こそこんな細い道、車で走って危ないと思わんのかぁ? ああ? お前が悪いんちゃうんか? そもそも車乗る奴おらんかったら事故なんて起こるはずもないやろ? 歩行者優先や! 車は車道走れ! こんなとこ来んなっ!」
「あ……いや、くま父さんじゃないか」
「せやったらどないやねん。チビッコには怒鳴ってワシには怒鳴らへんのか?」
「いや、悪かった。すまない……」
 ジジイは逃げるようにここから去っていった。
「こらぁー! チビッコたちに謝らんかいー?」
 ……ふっ、たやすいもんやで。
 最近の年寄りは自分が偉いと勘違いしている奴が多すぎる。
「……あの、くま父さん?」
「おう、チビッコたちか。……気にすんな。トラウマになったらあかんよ」
「うん、ありがとう……ありがとう、くま父さん!」
「へへ、ええってことや」
 やっぱり、人を助けるってことは素晴らしいことやな。

 ――新しいバイト先。
 幸い、スーパーのほうはまだクビになっていなかった。事情を話して、また通常通りシフトに入れてもらった。
 これで月に七万から八万の給料は確保できる。――で、問題はさつきの慰謝料。
 あんまり遠くまで行くん嫌やったから近くのコンビニで面接受けたで。
 ……例の、ワシがムショ行きが決定になったきっかけの店や。
 ここが一番アクセスの便がええねん。ダメ元で受けたら面接通ったわ。
 どうやらワシが脅した(ワシ自身はそんなつもりはなかったが)店員は店長やった。
 その店長は体調不良で辞めてしまったみたいや。なんか、ストレスとかたまってとか……そんな感じらしい。
 新しい店長はワシのこと知らんかったからな。ま、そういうわけでコンビニの店員になった。
 仕事はスーパーが終わってから三時間から四時間。
 かなりハードになるけど、五十万貯まったらすぐに辞める覚悟や。
 ゴールを決めていたら嫌々働くのでもある程度の踏ん切りがつくで。
「……ああ、最悪や。まさかコンビニバイトするはめなるとはなー」
 スーパーとは違って店の中にはワシを含めて店員は二人。
 こんなん、変なクレーマーとか出てきたらたまったもんやないな。大迷惑や。
 なんて考えてるとすぐに現れたわ。クレーマー……。
「兄ちゃん、コンセント貸してくれ! コンセント!」
 おっさん……四十代後半から五十代やろな。
 汚いおっさんや。来店するなり、なにいきなりワケのわからんことほざいてんねん。
「あの……はぁ?」
「コンセント! そこにあるやろ、コンセント。充電すんねん。貸してくれ」
 そんなサービス……コンビニでやってるわけないやんな。断ってええやんな。ワシ、間違ってないやんな。
「早く貸してくれ。これ充電できんかったら仕事終わらへんねや」
 なんか、バッテリーとかワケのわからんもん抱えて……。工事用の機械か。そんなもんめっちゃ電気代かかるんちゃうん? こんな奴に三十分も一時間もまとわりつかれたらたまらんで。
「コンセントはお貸ししていませんよ」
「奥にあるやろ、コンセント! 充電すんねん!」
「自分んちでして下さい」
「サービス悪いんちゃうか、ここ!」
 スーパーの客もアホばっかりやけど、こっちはもっとひどいで。
 こら、大変や。アホ相手するんがこんなに大変やったとは……。

 また、こんなこともあったで。
 これは大学生ふうのお姉さんが店に来たときやった。
 バイトをして三日目のことやった。
「えっと、おにぎり温めましょうか?」
「はい、お願いします」
 えっと、十秒やな。じゃあレンジに入れて一番と……。
 レンジのドアを開けると、凄まじい異臭が漂う。
「うわっ、くさ……! な、なんやこれは?」
 あまりにも臭すぎた。絶対このレンジ、おかしい。壊れてる? いや、それやったら誰か気づいてるはずやろ。
 機能の面では問題ない? じゃあ、この臭さは何が原因なんや。
 ワシは臭いのを承知してその原因を突き止めることにした。
 そしたら至る所に茶色いものがこびりついていた。
「これ……うんこなんちゃうか?」
 極めつけはレンジの上のほうになにやら衣類がひっついている。
 それを取り上げると――、
「……パンツやんけ。……誰や、こんなイタズラする奴は? それに、まるで漏らしたパンツを洗ってそのままレンジにでも入れて乾かしたようやな。……レンジ……パンツ……?」
 ああ、思い出した。これ、すけちゃんのパンツやわ。
 店員もなんで今まで気づかへんかってん……。