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サイコー君のくま父さん

くま父さんがアニメ化されるまでアピールするぞ! オリジナル漫画・ラノベ作品を大量に公開中!

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『くま父さん』 その1

第一章 くま父さん

  1 すけちゃんとの出会い

 ……約一年前になるかな。
 ワシはスーパーでみかんが特売やったから買いに行ってんや。で、先着三百名様やったけど、運良く買うことができた。
 夕方に行ったから、ない覚悟はしといてんやけど、まだ二十セットぐらいあったわ。
 なんで朝とか昼に行かんかったのか? それは久々に押入れから出したプレワンのゲームにはまっとったから。
 ぶっちゃけ昨日の夜から翌日の夕方までゲームしてた。二十時間ぐらいやってたで。
 この日は仕事なかったからな。思いっきりアホな生活送ってた。
 みかんの価格は五キロで九百八十円。めちゃ安!
 ワシはそれだけを買いに商店街のスーパーに寄った。
 帰りは別のコース。ちょっと公園の木とか見たかったから、そのコースで帰ることにした。すると……、
「うわぁーん! うわぁーん!」
 ん? なんや、子どもの泣き声がすんで。どっからや……公園からか。
「ほれ、逃げろっ!」
 小学生の男の子が数人、公園から飛び出した。
「……危ないなぁ。もし車とか走っとったら事故なっとったかもしれんでぇ……」
 さっきの泣き声と関係あるんかな。
 ま、五キロのみかんも重たいことやし、ワシはそのまま家に帰ろうとしたで。
「靴、隠されたぁっ!」
 靴……。
 これがかの有名なイジメか。
 人間はこれやからのぉー。クマにはこんなこと絶対ないんやけど。
 やっぱあかんな。こんな小さい頃からイジメる子がおるんや。こら世も末やで。怖い怖い……。
 ……でも、イジメられてる子、このままずっとイジメられたらどうすんねやろ。
 生きていくのも嫌になるかもしれへん。人生には楽しいこと、たくさんあるんや。それに気づかず、毎日イジメから怯える生活……そんなんあかん。かわいそうすぎるやん。
 人間は弱い生き物や。誰かがイジメにあっても助ける精神っちゅーもんがないなんてよくあることや。
 見過ごすか、見過ごさないか……。
 声をかけてやることなんて簡単や。何をためらう?
 人間やからほうっておいてええんか? ……ちゃうやろ。ワシは平和を愛するクマ……くま父さんや。
 人間もクマも関係あらへん。困ってるチビッコが目の前にいたら、ワシは……!
 いつでも助けたる覚悟じゃいっ!!
 ……あ、ちなみにおっさんとかババァはないで。
 そういうんムカつく奴多いから。あと、ヤンキー?

 ワシの地元の公園――三津屋(みつや)公園はけっこう敷地が広い。
 商店街から近いこともあって、人気の公園や。よく小学生とか、幼稚園・保育所に通ってる子も親子でよく来てる。
 この日はもう夕方やったし、公園は人の男の子しかおらんかった。
 ……その子がさっき泣いてたチビッコやった。今でも泣いてる。
 かなり背の低い……三年生ぐらいかな?
 丸っこい体をして、どことなく子グマの体型っぽい。
 足は短くて、手はまんまるやった。……なんか親近感湧くな。
「うわぁーん! うわぁーん!」
 なんで泣いてんねやろ……その理由はすぐにわかった。
 チビッコはなぜか裸足。……たぶんワシが公園の前を通りかかったときに飛び出してきた小学生たち……あいつらがこの子の靴を隠したんやろ。
 直感でわかったわ。ホンマ、とんでもない奴らやで……。
 男の子は下を向いて、ずっと泣いていた。ワシは横から男の子の肩にポンと手をやり、こう言った。
「どないしたん?」
「あ……くまさんだ」
「そやで、くまさんやで。ん? どうした……?」
「友達に靴……隠されたの」
「……そんなんする子は友達やない。友達っていうのは助け合うのが基本。イジメたり、困らせたりするもんやない!」
「……そうなんだ」
「そやで……でも、恨んだりしたらあかん。君のするべきことはイジメた子に、『それは間違ってる。やめて』って言ったることなんや。……それが友達ってもんやろ? 君がその子らに気づかせるんや」
「ボクが……?」
「そう。……ま、今日のところは日も暮れてきた。靴ないんやろ? 明日一緒に探してあげるから。……えっと、ちなみにどんな感じでなくなったん?」
「あのね、たけし君がね、『しんちゃん、靴脱いでよ』って言ったから脱いだの。そしたらたけし君がボクの靴持っていったぁ」
「ストレートやな。バリバリ隠す気満々やん。……しん、ちゃん? 名前、しんちゃんっていうんか?」
「うん、天野しんのすけ……」
「しんちゃんか……なんとかしんちゃんみたいやな。……んー、すけちゃん! すけちゃんって呼ぶわ!」
「すけちゃん……」
「いいやろ? あ、ワシの名前も言わなな」
「知ってる。クマさんでしょ?」
「いや、まあクマやけど……。ワシにも名前があんねん。くま父さん。ワシの名前はくま父さんや」
「くま、父さん……?」
「そう、背中に乗り。家まで送ってってあげる」
「うん」
 すけちゃんがワシの背中に乗った。
「……うわ、毛がゴワゴワしてるのー」
 悪気はないんやろな。正直な感想なんやろな。ま、ふかふかじゃないよ。
 これは寝不足が原因。体毛がよれよれになっとった。風呂にも入ってなかったからな。体臭とかもきつかったと思う。でも、すけちゃんは……、
「楽しいっ! くま父さんの背中に乗るの、楽しい!」
「へへ。人間を背中に乗せたんはすけちゃんが初めてやで。……さ、帰ろ」

 公園から歩いて十分ぐらいのところにすけちゃんのマンションはあった。
 ワシはマンションの前ですけちゃんを下ろした。
「よいしょっと……お疲れ様」
「うん……ありがとうっ、くま父さん♪」
「へへ、じゃ明日靴探してあげるから。朝の七時半に公園で待ち合わせな」
「うんっ♪」
「おっとバイバイの前にこれをちょっとおすそ分け……」
 ワシはみかんを二つ、すけちゃんに渡してやった。
「みかん……」
「そや。スーパーで特売しとったからな。ワシがすけちゃんに会ったんもこのみかんのおかげやっていうことや」
「そう……奇跡の、みかんだね。くま父さん、みかん好き?」
「あ、ああ……好きやで。だから買ってんやけどな」
「じゃあボクも好き! みかん大好き!」
「へへ、じゃあもう三つほどあげる。今日は特別大サービスやで」
 すけちゃんの小さな手には五つのみかんは持ちきれなかった。ぽとぽと落としてしまい、ワシはしまったなーって心の中で思った。

 ……これがワシとすけちゃんの出会いやった。
 ちなみに靴は砂場のところに隠されてたで。なんとか学校が始まる前に見つけることできたけど……。ホンマ、イジメとか最低やな。
 あんまりこういうのが続くようやったら、ワシから一言ガツンと言ったらなあかんな。
 ワシの正体って誰やねんってか?
 ……ワシはくま父さん。もちろんクマやで。丸くて球体みたいな体型してる。あと、顎がちょっと長いかな。
 特技は七色の屁。いろんな屁を操り、それで癒したり、攻撃したり、眠らせたり……。でも、それができるタイミングは限られている。お腹の調子が悪くなると一切屁技は使われへんからな。それがまあ悩みのタネかなー。
 クマの中でもちょっと変わったクマ……。
 三十八歳のフリーター。趣味はネット将棋。
 今はわけあって妻とは別居中や。